細かい文字でビッシリと記載されている用紙を手に取り
内容を読もうとしてもピンとが合わずボヤけてしまい
数秒、目頭を押さえては誤魔化している。

本人も原因はわかっている。
雑用兼アシスタントとして住み込みで働き始めたが
この新しい生活に慣れず
ほとんど寝不足なような毎日を過ごしているせいか
疲労が蓄積されているのだ。

だがそんな事をシバ社長に言えば
『体調管理も仕事だろ』とか言い兼ねない。
説教されるなら黙って早めに回復しないとと
自分に言い聞かせていた。


「この案について何かあるか?」

「あ、はい…
 えっと…ですね…」


返答を求められるも
正直、内容が頭に入って来なくて
感想が出て来ない。


「どうかしたのか?」

「…すみません。
 少し時間を頂きたいです」

「…そうか、わかった」


イトカの様子に社長は妙な違和感を感じたが
それほど気にしてはいなかった。

結局、本来は社長の仕事である案件を
住み込み先の屋敷に持ち込み
ダイニングキッチンの掃除をしながら考える羽目に。