「はあー、ひどい目にあった」
動きだした群衆を横目に見ながら、玲央が肩をまわした。夜のお堀公園はすでに、何ごともなかったかのように賑わいを取り戻しつつある。
空中に現れたゴーストたちは一掃された。
ただ、なぜか花火自体も終わりかかっていた。てぃあらたちがゴーストと戦っていたあいだは人々も花火も静止しており、時間が止まっているかのようだったが、やはりいくらかは動いていたということなのだろうか。
「よし、みんなお疲れ」玲央が言った。「家に帰って、《《花火見》》弁当食うか」
変身を解いて普通の中学二年生に戻ったてぃあらが、手をふりながらこちらに走ってくるのが見えた。玲央も笑顔で合図する。
「ミク、コンビニ行って、おにぎりありったけ買ってこい。たしかもう、米がない」
「うん」
ミクはうなずき、一緒に来るよう誘おうとクロのほうをふり返った。クロはすこし離れた場所に立っていて、ゴーストたちの残骸を眺めていたが、ふと虚空に向かって手のひらをのばした。
小さなオオカミが、鬼火のように瞬きながら彼の手のひらに舞いおり、そして消え落ちた。クロの視線は、長いあいだその破片に注《そそ》がれていた。
動きだした群衆を横目に見ながら、玲央が肩をまわした。夜のお堀公園はすでに、何ごともなかったかのように賑わいを取り戻しつつある。
空中に現れたゴーストたちは一掃された。
ただ、なぜか花火自体も終わりかかっていた。てぃあらたちがゴーストと戦っていたあいだは人々も花火も静止しており、時間が止まっているかのようだったが、やはりいくらかは動いていたということなのだろうか。
「よし、みんなお疲れ」玲央が言った。「家に帰って、《《花火見》》弁当食うか」
変身を解いて普通の中学二年生に戻ったてぃあらが、手をふりながらこちらに走ってくるのが見えた。玲央も笑顔で合図する。
「ミク、コンビニ行って、おにぎりありったけ買ってこい。たしかもう、米がない」
「うん」
ミクはうなずき、一緒に来るよう誘おうとクロのほうをふり返った。クロはすこし離れた場所に立っていて、ゴーストたちの残骸を眺めていたが、ふと虚空に向かって手のひらをのばした。
小さなオオカミが、鬼火のように瞬きながら彼の手のひらに舞いおり、そして消え落ちた。クロの視線は、長いあいだその破片に注《そそ》がれていた。
