ミクはしおしおとなった。「『ドレス』っていったら、それしか思い浮かばなかった……来月、友達の結婚式で……なに着ようかなって悩んでて……」
想像力の貧しい二十代女子に、ポロロはやや同情的な視線をおくった。
「ま、いいじゃない、今日は役に立たなくても。来月の結婚式に、それ着ていきなさいよ」
「うん……」
おそらくは、てぃあらの着ているようなふわふわしたバトルコスチュームを作るための魔法なのだろうが、いずれにせよそれだけではまず戦いには役に立ちそうにない。「わたしって、ほんとに役立たず……」
思考が薄暗い方向に行きそうなミクだったが、はっと顔をあげて、光る階段とクロを見た。
「あー、あいつ、手を使うの忘れてるわね」
ポロロの言葉どおり、クロは空中を跳ねて移動し、一匹のゴーストに執拗に噛みつこうとしている。数個しかないステップをうまく使って攻撃をしかけているようだが、いかんせん身体が届いていないようだ。人間の身体に慣れていないというのもあるかもしれない。
《《だが、攻撃は一匹に向いている》》。
(つまり、あれがアルファ個体なんじゃ……? クロには、それがわかったんだ)
もし、あのゴーストを固定できれば――?
思いついたミクの行動はすばやかった。
クロが攻撃をしかけているゴーストのあたりをよく見さだめ、思いきって叫ぶ。
「えーっと! ……すごく伸縮性があって横に長い、棒っぽい服! っていうか、ロープ!」
手の先に、ポンプ式のソープを押し出すときのようなじゅわっとしたエネルギーと音を感じた。呼吸ひとつ分のあいだ手のひらに留まっていたが、その後、はじけ飛ぶように一気に空中へと伸びていく。
布、いや、ロープが。
クロがすごいのは、飼い主がなにを意図してそんなものを出したのか、瞬時に理解したことだろう。頭を大きく振ってロープをくわえ、ステップを蹴って方向転換をしながら、ゴーストの身体に巻きつけた。結果、重力にしたがって落ちていくクロに引っ張られる形で、ゴーストが空中に固定される。
想像力の貧しい二十代女子に、ポロロはやや同情的な視線をおくった。
「ま、いいじゃない、今日は役に立たなくても。来月の結婚式に、それ着ていきなさいよ」
「うん……」
おそらくは、てぃあらの着ているようなふわふわしたバトルコスチュームを作るための魔法なのだろうが、いずれにせよそれだけではまず戦いには役に立ちそうにない。「わたしって、ほんとに役立たず……」
思考が薄暗い方向に行きそうなミクだったが、はっと顔をあげて、光る階段とクロを見た。
「あー、あいつ、手を使うの忘れてるわね」
ポロロの言葉どおり、クロは空中を跳ねて移動し、一匹のゴーストに執拗に噛みつこうとしている。数個しかないステップをうまく使って攻撃をしかけているようだが、いかんせん身体が届いていないようだ。人間の身体に慣れていないというのもあるかもしれない。
《《だが、攻撃は一匹に向いている》》。
(つまり、あれがアルファ個体なんじゃ……? クロには、それがわかったんだ)
もし、あのゴーストを固定できれば――?
思いついたミクの行動はすばやかった。
クロが攻撃をしかけているゴーストのあたりをよく見さだめ、思いきって叫ぶ。
「えーっと! ……すごく伸縮性があって横に長い、棒っぽい服! っていうか、ロープ!」
手の先に、ポンプ式のソープを押し出すときのようなじゅわっとしたエネルギーと音を感じた。呼吸ひとつ分のあいだ手のひらに留まっていたが、その後、はじけ飛ぶように一気に空中へと伸びていく。
布、いや、ロープが。
クロがすごいのは、飼い主がなにを意図してそんなものを出したのか、瞬時に理解したことだろう。頭を大きく振ってロープをくわえ、ステップを蹴って方向転換をしながら、ゴーストの身体に巻きつけた。結果、重力にしたがって落ちていくクロに引っ張られる形で、ゴーストが空中に固定される。
