ブラックドッグ・フェアリーテイル ~君と13回目の主従関係~

「痛《い》ったぁ」
 野球ボールのようにクロの手におさまっている《《もの》》が、声をあげた。ぬいぐるみのようなものがぷるぷると身体を震わせている。
「あ! マスコットの人!」
「……ミクちゃん! 犬!」
 パステルカラー(ユニコーンカラー?)の仔馬型ボディにきらきらしい声で紛らわしいが、先日相談に乗ってもらった、魔法少女てぃあらのマスコットキャラ、ポロロだった。てぃあらのお伴《とも》でいるときは、《《こっち》》の姿なのだろう。が、彼女とは違う方向に飛ばされてしまったらしい。
 『犬』と呼ばれたクロは、手の中のぬいぐるみめいたマスコットをじっと見つめ、おもむろに投手の格好で大きく振りかぶった。
「ごめん! やめて! 投げないで!」
「……主人のところに投げてやろうと思って」
「ちょっとその善意は受けとめられない! 私、犬じゃないから! かよわいマスコットだからっ」
 慌てているせいか、口調が『ジェシカ』のままであった。 

「おい! マスコット!」玲央があわただしく割って入った。
「そんなことはいいから、早くてぃあらを助けるんだ!」