夜闇に蛍光ピンクのハートマークが飛び散り、勇ましいんだか、可愛いんだかよくわからない口上が決まった。ミクは、こういうときは拍手をしたほうがいいのか、それとも黙って見守るのが観客のマナーなのかと場違いな心配をしてしまった。
「遅れるって……こっちの用事だったのかよ」
ふだん物事に動じない玲央も、さすがにぼうぜんと呟いた。二人とも、妹が魔法少女をやっていることは知っていても、その活動実態をじかに見るのは初めてだったのだ。
クロがミクの上からすっと離れて、また目線をあげた。
てぃあらが杖を振ると、夜闇にネオンブルーの光がほとばしり、その先の獣たちが触れもせずになぎ倒されて粉砕されていく。映画かショーを観ているようで、現実でなければ爽快な場面だっただろう。
「あれが、魔法」
はじめて見る魔法らしきものと、妹の出現とに、ミクは恐怖も忘れて見入ってしまった。
ひらりと空中を舞い飛んでは、杖を振り、ゴーストなるものを消失させていく。はじけとんだ破砕片が、月の光を反射してきらめいた。
「てぃあら、大丈夫かな……」
ミクは呟いた。
クロはまだ中空をじっと見つめている。
粉砕された獣たちは、しばらくはふわふわと空中を漂っているが、時間が経つとふたたび獣の形に戻っていく。しかも心なしか、粉砕される前よりも大きく、数も増えているように見える。しだいに破砕片の数そのものも増えて、ゆったりと渦を巻きながらひとつの形を取ろうとしはじめた。
巨大な首なしオオカミの姿に集まったものが、うなり声をあげ、てぃあらに体当たりしていった。
「危ない!」
ミクは思わず叫んだが、遅かった。少女は吹っ飛ばされて、三人の視界から消えた。
「てぃあら!」
走って追いかけようとするミクの腕を、クロがつかんだ。
「止めないで、クロ、妹が……」
振りきろうとするも、目の前になにかの固まりが飛んできて、それをクロがすばやくキャッチする。ばしんっ、といういい音がして、ミクは驚いて目をぱちぱちさせた。
「遅れるって……こっちの用事だったのかよ」
ふだん物事に動じない玲央も、さすがにぼうぜんと呟いた。二人とも、妹が魔法少女をやっていることは知っていても、その活動実態をじかに見るのは初めてだったのだ。
クロがミクの上からすっと離れて、また目線をあげた。
てぃあらが杖を振ると、夜闇にネオンブルーの光がほとばしり、その先の獣たちが触れもせずになぎ倒されて粉砕されていく。映画かショーを観ているようで、現実でなければ爽快な場面だっただろう。
「あれが、魔法」
はじめて見る魔法らしきものと、妹の出現とに、ミクは恐怖も忘れて見入ってしまった。
ひらりと空中を舞い飛んでは、杖を振り、ゴーストなるものを消失させていく。はじけとんだ破砕片が、月の光を反射してきらめいた。
「てぃあら、大丈夫かな……」
ミクは呟いた。
クロはまだ中空をじっと見つめている。
粉砕された獣たちは、しばらくはふわふわと空中を漂っているが、時間が経つとふたたび獣の形に戻っていく。しかも心なしか、粉砕される前よりも大きく、数も増えているように見える。しだいに破砕片の数そのものも増えて、ゆったりと渦を巻きながらひとつの形を取ろうとしはじめた。
巨大な首なしオオカミの姿に集まったものが、うなり声をあげ、てぃあらに体当たりしていった。
「危ない!」
ミクは思わず叫んだが、遅かった。少女は吹っ飛ばされて、三人の視界から消えた。
「てぃあら!」
走って追いかけようとするミクの腕を、クロがつかんだ。
「止めないで、クロ、妹が……」
振りきろうとするも、目の前になにかの固まりが飛んできて、それをクロがすばやくキャッチする。ばしんっ、といういい音がして、ミクは驚いて目をぱちぱちさせた。