(てぃあら、まだ遅くなるのかな)
 それよりも、妹のことが心配になってきた。こんなに混雑していてはスマホも繋がりにくい。あの子、ちゃんと合流できるかな。
(それに、遅れるって――あの子の用事って――)
 《《魔法少女の仕事なんじゃないだろうか》》。

 視界の端、足もとあたりに、ふいにキラキラしたものが見えた。花火を見つめすぎたかなと頭を振ってみる。が、キラキラしたものは消えない。飛び散った花火のかけらが、そのまま地面に落ちたように見えるが、もちろんそんなはずはない。
 キラキラしたものは、輝きを放ちながらちらちらと地面を飛び跳ねていた。キラキラ、ケタケタ、キュワキュワと、小さいながらもにぎやかな音を立てている。サイダーの泡がはじけるのにも似て、どこか陽気で音楽的な音だった。
(不気味だけど、ちょっとかわいい……)
「何……?」
 ミクが思わず手を伸ばしかけたのと同時に、クロが体当たりしてきた。小柄なミクは、吹きとばされるように思いっきり植え込みに倒れこむ。
「危なっ――」
 クロどうしたの、といいかけた声は、喉の奥で固まった。キラキラした何かは、くるくるっと勢いよく回転しながら、クロに飛びかかる。キィンと澄んだ音がして、その腕が鈍く光った。
「クロ!」
 ミクの声は悲鳴じみたものになった。クロの腕は凍っていた。鈍く光って見えたのは、氷だったのだ。
「下がっていろ! 《《それ》》に触るな!」
 聞いたこともない恐ろしい声で命じて、クロは腕を押さえたまま周囲を確認した。植え込みに伏しているミクからは背中しか見えない。グルルッ、と喉の奥から漏れるような(うな)り声が聞こえた。