「……クロ。わたしの話がわかるんだよね? たぶん……」
 そう思うと恥ずかしくなった。「そろそろ戻ろっか。外で昨日みたいなことになったら大変だし――」
 言いかけたミクの言葉が、ふと止まった。

 ぐごっ。
「へ?」

 抱きかかえるような体勢になっているクロの喉の奥あたりから、奇妙な音が聞こえたような気がする。
 そう思う間もないほど早く、音は激しさを増していった。

 ぴちゃぴちゃ、ぐぎっ、メリメリッ……

『夜中に一回、騒々しい音を立ててたけど、どうもそのときに犬に戻ったらしくてな』
 頭のなかに、早朝の兄のセリフがよみがえってきた。
『なんか、「びちゃっ」とか「ごぎっ」とか、そういうわりとスプラッタ系の音だった』

 ミクは恐怖で血の気が引いていくのを感じた。