「はあ!?」「ええっ」
 男二人の声が重なった。
「あのな、男同士がひとつの布団で眠れるのはスネ毛が生えるまでなんだぞ。お兄ちゃんの足をよく見ろ。ボーボーだろうが?」
「俺は犬で、猫じゃないから、他のオスと団子みたいになっては眠れない」
 と、それぞれに、ミクに向かって主張をはじめた。さっきまでうとうとしていたのに、腹がくちくなったおかげか妙に元気である。

「こんなデカい男と分けあえるほど、俺のベッドは広くない。そもそも、俺は犬をベッドに上げるのは、しつけの面から反対だ」
「なにを言うんだ。俺は飼い主と一緒に寝ても上下関係を混同したりしないし、寝床で排泄もしない」
「俺が寝床で排泄する的に言うな」
 兄と男が、なんだか険悪な雰囲気になりつつある。
 そしてやっぱり、男はとても、犬っぽかった。

 ミクはなだめるように言った。
「とにかく、今日のところは玲央と同じ部屋で寝てほしいの」

「『一緒に寝ようね』って言ったのに……」男は、まだ恨めしそうだった。