私は堪忍袋の緒が切れて、男に殴りかかった。しかし男の体は水中の草の様に、私の殴りかかる拳をユラユラと避ける。
私が何度殴りかかっても、男の顔や体には当たらない。私の殴りかかる腕も、水中でフニャフニャっとなって、思い通りにいかない。
私は何度殴りかかっても埒が明かないので、仕舞には彼女を連れて逃げようとするも、彼女は人魚になっており、水中を何食わぬ顔で泳いでいる。
私は自分も人魚になっているのだろうかと思ったが、私は人間のままである。男は何時の間にか顔が人間で体だけが魚になっていた。
その後、人魚になった彼女と、体だけが魚になった男は、並んで私の周りを廻った後、何処かへ泳いで消えた。