草いきれの匂いに満ちた、外灯もない真っ暗な夜の公園を湊人と手を繋いで歩く。
柔らかな土や雑草を踏みしめながら、ゆっくりゆっくり前に進んだ。
期待に満ちた人々の囁きが、そこかしこから聞える。
「あ! ママ! 蛍いたよ!」
水辺の巨木のあたりから、幼い子供のはしゃぎ声がした。
五つほどの緑がかった光が、淡くゆっくりと明滅を繰り返しながらふわふわと舞っている。
蛍の求愛の光。
綺麗……。
なんて美しくて神秘的な光景だろう。
「なぁ、店名の意味、分かった?」
湊人にそっと問いかけられて私は首を横に振った。
「Lucioles……リュシオル。フランス語で蛍だよ」
「蛍……。リュシオル。綺麗な響きだね」
繋いだ手を湊人がぎゅっと握るから、私もやんわり握り返した。
左手に彼の温もりを感じながら、蛍が愛を囁き合うのを眺める。
約束どおり彼とちゃんとこの場所に来られて良かった。
「会いにきてくれて、ありがとう」
そっと囁くと、湊人の甘い声が降ってくる。
「また来年も、再来年も、じいちゃんばあちゃんになっても、一緒に蛍、見にこような」
一生分の約束だねと、私たちは指きりをして笑い合った。
柔らかな土や雑草を踏みしめながら、ゆっくりゆっくり前に進んだ。
期待に満ちた人々の囁きが、そこかしこから聞える。
「あ! ママ! 蛍いたよ!」
水辺の巨木のあたりから、幼い子供のはしゃぎ声がした。
五つほどの緑がかった光が、淡くゆっくりと明滅を繰り返しながらふわふわと舞っている。
蛍の求愛の光。
綺麗……。
なんて美しくて神秘的な光景だろう。
「なぁ、店名の意味、分かった?」
湊人にそっと問いかけられて私は首を横に振った。
「Lucioles……リュシオル。フランス語で蛍だよ」
「蛍……。リュシオル。綺麗な響きだね」
繋いだ手を湊人がぎゅっと握るから、私もやんわり握り返した。
左手に彼の温もりを感じながら、蛍が愛を囁き合うのを眺める。
約束どおり彼とちゃんとこの場所に来られて良かった。
「会いにきてくれて、ありがとう」
そっと囁くと、湊人の甘い声が降ってくる。
「また来年も、再来年も、じいちゃんばあちゃんになっても、一緒に蛍、見にこような」
一生分の約束だねと、私たちは指きりをして笑い合った。