「……突然だが、君は死んだ」
 至極面倒臭そうに言われる。
 目を覚ますと、見たこともない男の人が目の前にいて私を見下ろしていた。
「え、あの」
「……勝手に喋るな。質問は受け付けていない」
「あ、はい」
 有無を言わせぬ相手の態度に、私は思わず頷いてしまう。
「……まずは確認事項だ。君は海に身を投げて死んだ。それは覚えているな」
 覚えている。
 私は海の底で泡となって消えた。そして、気が付いたらここにいたのだ。
「……愛する者のために、何もかもを捨てて。それでも想いを叶えることができず。男の幸せを祈って自ら幕を引いた」
「--」
「……全てを犠牲にして、結果何一つ報われることもなかった」
「--」
「……何とも愚かな生……そして、愚かな死だ」
「--」
「……だが、そんな君だからこそ、もう一度チャンスをやってくれという意見も多くてね」
 男の人は大仰に肩をすくめてみせる。
 その頭上には眩く光る輪が浮かんでいた。
「……これから時間を巻き戻して、君の魂を再び同じ肉体へと転生させる。同じ轍を踏まないことを祈っている」
 それでは人魚姫よ。
 その言葉を最後に、私の意識はまた闇に覆われた。

 ああ。
 もう一度、あの人に会えるのならば。今度こそはーー