たしかに喘息持ちと知っていても、いまいちピンとこないのは、普段そんな素振りを一切見ないからだと思う。
激しい運動の時だけ体育は見学してるけれど、結局みんなが近寄って蚊帳の外にいることはないし、バスケの時も試合には出ないけれど、遊びで渡されたボールは軽々と投げてスリーポイントシュートを決めてしまう。
運動をしてるところを見たことがないけれど、運動神経はいいはずだってみんなが思ってしまうのも無理はない。
「頼むよ。旭が参加してくれたらみんな喜ぶからさ!」
まるで神頼みのようにお願いされている。
期待には応えられない。ごめん。できないって、三浦はそれらの言葉を絶対に言わないだろう。
それは好かれたいからじゃない。きっと、みんなのことをガッカリさせたくないって思ってる。
自分のことじゃなくて誰かの気持ちを優先させる彼は、いい人を通り越して、優しすぎる。
「あの、……私、走る!」
勢いよく立ち上がったあと、気づけばそんなことを口走っていた。