「……私、もう、いいのかな」

「なにが?」

「もう、旭に会いに行かない理由を探さなくていい? 今度は会いに行く理由を見つけてもいいのかな?」

たくさん遠回りして間違ったこともしたし、変わってしまったこともあるかもしれないけれど、今の私で旭に会っていいの?

「なに言ってんのよ。いいに決まってるじゃないの」

「……っ」

本当は誰かに背中を押してもらいたかった。止めどなく流れてくる涙を私は手のひらで何度も拭う。

「やめて、私が泣かしてるみたい」

「ごめん……なさい」

でも、止まらない。すると、早坂さんはカバンからハンカチを取り出した。それを迷わずに私へと差し出す。

「泣くなら旭の前で泣きなよ。悔しいけど、旭もあんたの前でなら泣くと思う。私がいくら頑張ってもできなかったことよ」

ハンカチを受け取った。優しい匂いがする。

旭はひとりしかいない。

旭の隣にいていい女の子もひとりしかいない。

この想いを彼に伝えよう。

彼のことを本気で想っていた彼女に恥じないように。