「どうして断ったの?」

「どうしてって、それ聞くの?」

 由貴ちゃんが静かに笑う。

「俺が好きなのはめぐだからに決まってるだろ」

 そう告げた由貴ちゃんの顔がゆっくりと私へと近づいてくる。そして私が付けているマスクへと手を掛けた。

「これジャマだね」

 口元を覆っていたマスクがずらされる。瞬間、私の唇にそっと由貴ちゃんの唇が押し当てられた。それは触れるだけの短いキス。

 しばらくして由貴ちゃんの唇が離れていく。

「風邪、移るよ」

「俺に移してめぐが楽になるなら移していいよ。めぐの風邪なら大歓迎」

 由貴ちゃんは優しくにっこりと笑った。

 この熱が下がったら由貴ちゃんにプレゼントするマフラーを編み始めよう。そして、伝えよう。

 大好きだよ、由貴ちゃん――



end.