「大丈夫?眠れそう?」

 ベッドの脇に腰掛けた由貴ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。そして、自身の手を私の額にそっと置いた。

「まだ熱いね」

 由貴ちゃんの手が冷たくて気持ちいい。

 なんだか胸がきゅっと苦しくなって、視界がぼやけてくる。

「め、めぐ? どうした? 泣くほど熱で辛い?」

 由貴ちゃんの慌てたような驚いた表情がぼんやりと見える。

「ううん。そうじゃない」

 すん、と鼻水をすすりながら私は答える。自分でもこの涙の理由が分からない。また熱のせいかな。

「由貴ちゃん。あの人、誰?」

「あの人?」

「うん。昨日、一緒にいた人」

「ああ」

 由貴ちゃんは思い出したように答える。

「職場の後輩だよ。傘を忘れたって言うから駅まで入れてあげたんだ」

「そっか」

「めぐも傘を持っていなかったのに入れてあげられなくてごめんね。本当はあのあとすぐに追いかけたかったんだけど、後輩もいたからできなくて」

 ごめんね、と呟いて、由貴ちゃんは私の髪をそっと撫でる。

「実はあのあと告白されたんだ」

「え……」

「でも、断った」

 由貴ちゃんははっきりとそう告げる。

 昨日の彼女、由貴ちゃんのこと好きだったんだ。可愛い子だったのに。