「そういうことだから、家に入るね」

 それから由貴ちゃんは慣れたようにリビングへと向かう。

 子供の頃からもう何度も我が家に来ているので、由貴ちゃんにとって私の家は自分の家も同然。そしてそれは私も同じで、由貴ちゃんの家の間取りはすっかり把握している。

 由貴ちゃんはスーツの上着を脱ぐとそれをダイニングテーブルのイスの背もたれにかける。それからネクタイを少し緩めて、ワイシャツの袖を肘のあたりまでまくった。そして、由貴ちゃんに風邪を移さないよう慌ててマスクを取り出して付けている私に向かって声を掛ける。

「めぐ、何か食べた?」

「え。えっと……とりあえず家にあったパンとかバナナとか」

 熱のせいで身体もだるくて何か作る元気もなかったし、そんなにお腹も空いていなかった。だから今日一日はキッチンにあるものを適当に食べるだけだった。

 由貴ちゃんは冷蔵庫を開けると中身を確認している。

「今からおかゆ作るから。めぐはソファに横になって少し待っていて」

 そう言うと、由貴ちゃんはさっそく料理にとりかかる。