「結局、めぐみの一番は由貴ちゃんなんだよ」

 ゆかりの言葉にハッとなる。

 もしかしてゆかりはこのことを伝えるために、私を合コンに連れ出したのかな。

「うん。そうだね。私の一番は由貴ちゃんだ」

「大事にしないと。めぐみを好きだって言ってくれた由貴ちゃんの気持ち」

 そうだね、と私は静かに頷く。
 
「ありがと、ゆかり。私、大事なことに気付けた気がする」

「うん。それならよかった」

 微笑むゆかりに私も笑顔を返す。それから彼女に手を振ると、私はお店を後にした。



 外へ出ると、ざーざーと音をたて、本降りの雨が降っている。鞄の中を漁るけれど、こんなときに限って折り畳み傘を忘れてしまった。

 店先の前でしばらく考えていたけれど、とりあえず近くのコンビニで傘でも買おう。そう思って、雨の中、一歩を踏み出そうとしたときだった。よく見慣れた人物が目に飛び込んでくる。

「由貴ちゃん?」

 スーツのまま傘を差して歩く姿から、たぶん仕事終わりで帰宅途中かもしれない。ちょうどよかった。由貴ちゃんの傘に入れてもらおう。

「おーい! 由貴――」

 そう思ったけれど、途中で声を引っ込めた。降ろうと思って頭の上に上げた右手もゆっくりと降ろす。