「そういえばめぐみのやつこんなこと言ってたな。由貴ちゃんはただの幼馴染で男としては見られないって」

「森谷君っ!」

 私は思わず声をあげて、由貴ちゃんの背中から飛び出した。

 たしかに何かの話の流れでそう言ったことはある。でもそれを今、由貴ちゃんの前で言わなくても。そうっと彼の横顔を見上げるけど、その表情からは何もうかがうことができない。

「めぐ」

 由貴ちゃんが私の名前を呼ぶと、私の手を引いて再び背中に隠す。そして由貴ちゃんが冷静に言葉を返す。

「知ってるよ。めぐが俺をどう思っているかなんて」

 由貴ちゃんはそこで一呼吸置くと言葉を続ける。

「あんたのときだけじゃない。めぐに新しい彼氏ができるたびに、勇気を出して告白できない自分が情けなくて悔しかった。他のやつよりも俺が一番めぐのこと近くで見てきたし知ってるはずなのに」

 えっ、由貴ちゃん……? 何を言ってるの?

 突然過ぎて理解が追い付かない。

「でも俺もそろそろ限界なんだ。なぜかめぐの彼氏はあんたも含めて全員ろくでもないやつばかりだから。今度は俺がめぐの彼氏になってめぐを守る」

「由貴ちゃん……?」

 私の手を掴む由貴ちゃんの手にぎゅっと力がこめられる。

「だから、あんたにめぐは渡せない」