私もまだ片手で数えられるくらいしか遭遇したことがないけれどブラック由貴ちゃんはすごくこわい。それにそうなった由貴ちゃんは私でも手が負えない。そして今まさにそれになりつつある。

「あんたこそ噂の森谷君だろ? めぐの元彼の」

 まずい。由貴ちゃんの喋り方がいつもと変わっている。初対面の森谷君から、馴れ馴れしく由貴ちゃんと呼ばれたことが不愉快だったのだろう。

 半分は私のせいだ。森谷君に幼馴染の話をするときにいつも私が由貴ちゃんをと呼んでいたから。

 それに、森谷君も森谷君で付き合ってから分かったことだけどかなりの二重人格だ。職場で同期として接していたときは気が付かなかったけど彼女になってみると森谷君のたまに出てくる横暴さがとても気になっていた。

 とりあえずここはふたりを引き離そう。森谷君だって私に用事があってわざわざ実家まで来たはずだし。

「ゆ、由貴ちゃん落ち着こう。森谷君も私に話があるんでしょ?」

 素早く由貴ちゃんの背中から抜け出すと私はふたりの間に割って入った。