会いたくない。話したくない。

 すると、そんな私の異変に気が付いた由貴ちゃんが、素早く私の前に立つと森谷君との間に壁を作ってくれた。それが気に入らなかったのか森谷君の鋭い声が響く。

「あんた誰?ーーあっ、もしかしてあんたが噂の由貴ちゃん?」

 森谷君に馴れ馴れしく由貴ちゃんと呼ばれたことが気に入らなかったのか、由貴ちゃんの声がいつも以上に低くなる。

「そうだけど、だったらなに?」

 由貴ちゃんは基本的に穏和な性格で人との争いをとても嫌う。争うくらいなら自分がぐっと我慢をしてその場の雰囲気を壊さないようにする人だ。

 大人になった今ならそういう強さもあると理解できるけど、子供の頃の私はそんな由貴ちゃんを頼りない弱虫だと思っていた。
 
 でも、たまにそんな穏やかな由貴ちゃんでも怒りを押さえられなくなるときがある。