ハンドメイドマルシェが終わったのは午後四時だった。

 あれから私の食べかけのたい焼きをひとつ由貴ちゃんにあげた。

 由貴ちゃんは今日は暇だからとマルシェが終わるまで店番に付き合ってくれた。そのおかげか由貴ちゃん目当ての女性がそのあとも絶えず私の作品をみに来てくれて、この日の売上は過去最高を記録した。

 その売上でマルシェが行われた広場の近くにあるイタリアンレストランで、ふたりで夜ご飯を食べた。

 それから、明日も休みだし今日はもう東京のマンションには帰らずに実家へ泊まっていくという由貴ちゃんとふたりで、街灯の灯りがぼんやりと照らす狭い住宅街の道を並んで歩いている。

 由貴ちゃんはさりげなく移動して車道側を歩くと、車が横を通るたびに私を気遣って歩いてくれる。

「ねぇねぇ由貴ちゃん。今年は何色がいい?」

 また一台車が通りすぎていったところで私がたずねると、隣を歩く由貴ちゃんが「何色?」と首を傾けた。けれどすぐに理解したのか「ああ!」と声をあげる。

「今年ももうそんな季節か」

 しみじみとそんなことを口にする。