「今からホットココア作るから、めぐは座って待っていて」

 俺のベッドに腰掛けている幼馴染にそう声を掛けると、「由貴ちゃんのココア好きー」と赤く腫れた頬で彼女が微笑む。

 ココアなんて誰が作っても同じだと思うけど。

 俺は、狭いキッチンに立つと、小さな鍋でお湯を沸かす。そして、二人分のマグカップを取り出すと、幼馴染のために常備しているココアの粉をスプーンで測ってカップに入れる。

 ちらっと視線を幼馴染へと向けると、彼女は俺のベッドで仰向けに寝転び、天井をぼんやりと見つめていた。その右手は、赤く腫れている右頬をそっとおさえている。

 彼女に何があったのかはわからない。でも、俺は頼ってこうしてここへ来てくれたのはわかる。

 彼女にとって俺は頼りになる幼馴染。

 それでいいと思っていた。

 彼女が俺を必要としてくれているのなら……。

 先ほどのドラマをふと思い出す。あの少年の想いは幼馴染の少女に届くのだろうか。あのふたりの関係をつい自分と重ねてしまう。

 もしも俺が幼馴染に好きだと伝えたら、彼女はどんなリアクションをするのだろう。そして、どんな答えが返ってくるのだろう。