「あ~、どうしたらいいんだろう」

 両手で髪をわしゃわしゃとかき回す。そんな私にゆかりは「とりあえず返信はしなよ」と言い残し、一足先に社食を後にした。

 時計を見ると私もそろそろ売り場に戻る時間なので、慌てて残りのパスタを口に詰め込んだ。



 売場に戻ると、次に休憩に入る同僚に声をかけて代わりにレジへ入った。午前よりも客足は落ち着いているものの、それでも普段の同じ時間帯よりは賑わっている。

「あの……すみません」

 発売された新商品のカタログをパラパラとチェックしていると控えめな女性の声が聞こえて顔をあげる。おお、お腹が大きい!妊婦さんだ。たぶんもう臨月ぐらいだと思う。

「どうされましたか?」

「ベビードレスを探していて」

「ベビードレスですね。それでしたらこちらになります」

 妊婦の女性の隣には旦那さんがぴったりとよりそって、マタニティマークのついた女性物の鞄を持ってあげている。今日は二人で産まれてくる赤ちゃんのためのベビードレスを探しに来たらしい。いいな、なんだか微笑ましい。