「明日から出張でしばらく日本を離れるから」

　なるほど。どうやら由貴ちゃんは海外出張へ行くらしい。その前に一緒にご飯を食べに行くのが、いつの間にか私たちの間で定着していた。

　それにしても由貴ちゃんの海外出張は今年でもう何度目になるのだろう。

　由貴ちゃんは都内に本社を構える大手食品飲料メーカーに勤務している。どんな仕事をしているのか詳しくはわからないけれど、海外事業部という部署にいるらしい。そこは主に海外に向けた営業を担当しているらしく、定期的に現地へ行かなければならないそうだ。

「めぐは何食べたい？」

　人通りの多い大通りをスーツ姿の由貴ちゃんと並んであるく。……うーん、視線が痛い。

　さっきからすれ違う女性たちが由貴ちゃんを見て振り返っている。『あの人めっちゃかっこいい』なんてヒソヒソ声が聞こえるけれど、由貴ちゃん本人には聞こえていない。

　由貴ちゃんと歩くといつもこう。もう慣れっこだけど、由貴ちゃんを見たあとの女性たちの視線が私へ向かったときの冷めた感じがどうも苦手だ。

『え、なにあの隣の子もしかして彼女？』『うそでしょ。あんな普通の子が？』とかなんとか言われているに違いない。