「なにそれ。ひっどー。森谷君てそんな人だったの?」

「うん。そんな人だったらしい」

 つい三日前に別れた元彼の森谷君も私とゆかりの同期で営業の仕事をしている。

 私と森谷君はもともとそれほど親しいわけではなかったものの、おととしの年末に開かれた同期会で距離がぐんと縮まってふたりで食事に出かけるようになった。

 だんだんと森谷君のことが気になり始めた頃にちょうど告白をされて交際がスタート。あのときはまさか森谷君に結婚の約束をしている本命の彼女がいて、私が浮気相手に選ばれたなんて思いもしなかった。

「私ってやっぱり男を見る目がないのかも」

 とれかけのパーマヘアをばっさりと顎のラインまで切ったショートボブの髪を両手でわしゃわしゃとかき回す。すると、そんな私の肩にゆかりがぽんと片手を乗せて、同情の言葉をかけてくれる。

「たしかにめぐみは男運がないよね。前の彼氏は束縛魔のストーカーだったし、その前の彼氏も……」

「やめて! 束縛ストーカー男の話はしないで。思い出したくないから」

 両手で耳を塞ぎながら首を振る。あの人は本当に最悪だった。