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「隣空いてる?」
週が明けた月曜日。
ほぼ満席の社員食堂でランチをとっていると、同期の鹿島ゆかりに声を掛けられた。
彼女はタコライスの乗ったトレイをテーブルへ置くと、私の隣の席のイスを引いて腰を下ろす。
私たちが勤務するのは都内にある老舗百貨店。大学卒業後、新卒で入社して今年で三年目になる。私は九階にある子供服売り場を担当していて、ゆかりは三階の婦人服売り場の担当だ。
昼食は、売り場ごとで順番に取ることになっているので、こうしてゆかりとランチの時間が重なるのは一週間ぶりかもしれない。
「ねぇ、どうしたのその髪。そんなにばっさりと来ちゃって」
タコライスをぱくぱくと口に運んでいたゆかりの視線が私の髪に注がれたので、しょうが焼き定食に箸を伸ばしつつ私は答える。
「失恋したから気分転換に切っただけ」
「え。森谷君と別れたの?」
「そう」
どうして?と、ゆかりが詰め寄ってくるので、三日目の出来事を事細かに説明した。