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駅までの道を二人並んで歩く。

微妙な距離感が、二人の初々しさを物語っていた。
恋人になったことに慣れない広人が、緊張した面持ちで言う。

「杏奈さん、その…。」

「はい?」

「えっと…。手を…繋ぎますか?」

「いいですよ。」

はいと出した手をそっと握る広人。
握り方まで優しくて、そんなところまで性格が出るんだと、杏奈は笑みがこぼれた。
杏奈は握られた手を一度開いて広人の指に絡める。

「もう恋人なんだから、こっちの方がよくないですか?」

それはいわゆる恋人繋ぎというやつで。

広人は眼鏡をずらしそうな勢いで照れていて、手からも緊張が伝わってくる。
あまりにも広人が照れるので、それを見ているだけで杏奈まで必要以上にドキドキしてしまった。

こんなじれったい恋は初めてかもしれない。
だけど、こういうのもなんかいいなと杏奈は心がほわほわとした。

二人は顔を見合わせて微笑み合うと、その手をしっかりと握って歩き出す。

二人を纏う空気はとても穏やかで優しくてあたたかかった。



【END】