ズラリと並ぶメガネたちを前に、二人は固まった。

「最近のメガネは種類も豊富なんですね。」

色や形だけでなく、フレームの素材やレンズの加工も多種多様だ。
たくさんの案内表示にキョロキョロしてしまう。

「私実はメガネ屋さんって初めてなんですよ。あ、ほら。まずはフレームをお選びくださいって書いてありますね。いろいろ試着してみましょう。」

子供の頃からほとんど視力の落ちていない杏奈は、メガネショップは初めてだ。
とりあえず店内に貼ってある【購入の流れ】に沿ってフレーム選びから始めた。

「これとかどうです?」

レンズの部分がスクエア型で細身のフレームを手に取って広人に渡す。
広人は掛けていたメガネを外して、試着した。

「どうでしょう?」

「なかなかいいかも。ほら、自分でも鏡で確認して。他にも掛けてみましょう。」

目の前に設置されている鏡を見るように促し、杏奈はあれこれとフレームを選ぶ。
濃い色のもの、薄い色のもの、レンズの形が違うもの。
広人は杏奈が手渡すメガネを文句も言わずに試着するので、杏奈は何だか楽しくなってきて調子に乗って次々と選ぶ。
メガネひとつで顔の印象がガラリと変わることが、不思議で面白かった。

「さて、どうでした?気に入るのありました?」

「えっと、メガネを外すと全然見えなくてどれが似合っているのかさっぱりです。杏奈さんが選んでくれませんか?」

「私が?でも…。」

「杏奈さんに選んでもらいたいです。」

「うーん、じゃあこれがいいと思います。一番最初の。広人さんの顔の輪郭に合うし、すごく明るい印象に変わるから。」

散々試着したにも関わらず、杏奈は一番最初に手にしたスクエア型の細身のフレームを広人に渡す。

「じゃあこれにします。えっと次は…。」

「店員に声をかけてくださいって書いてありますね。あ、すみませーん!」

【購入の流れ】を読みながら、杏奈は近くの店員を呼んだ。