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彼の住む家はその少女の家から少し離れた閑静な住宅街の一等地にあった。
有名な華道家の息子ということもあり、家は立派な日本家屋だった。
幼い頃、彼自身も花を習わされていたのだけど、才がないと言われ続けていた。だけど、彼は何も気にしていなかった。花をいけることに喜びを感じるような少年だったからだ。それ以上も以下もなかったし、兄に花の才があったのもあってか、上達しろとも言われなかった。
小学生の頃、習い事で始めた書道でいい出会いがあった。
教えてくれる先生が、彼の文字に「喜びが溢れているね」と感性をとても誉めてくれたのだ。そんな先生といると、とてもほっこりとした気持ちになり、書道教室に通うことも書くことも喜びとなった。
それから、上達するのに時間はかからなかった。
師範まで上がり、数々の賞を受賞した。
高校生になると、偶然、海外の大物アーティストに彼の書を見初められ、アーティスト写真の撮影の際に、声をかけられた。
そのアーティストの肌に直接、文字を書くという大胆なものだったのだけど、何かの縁だろうと心よく引き受けた。
それが火種となり、持前の美しいルックスもあいまって、彼の書の購入の希望、デザインや取材の依頼がひっきりなしになった。
彼をアイドルのように扱うひとがいることにはとても驚いたが、自分の愛を表現できるこの環境にとても感謝していた。