高三の春、三組の高尾圭介(たかおけいすけ)が死んだ。
「昨夜、えー、三年三組の高尾圭介くんが亡くなりました。
彼の早すぎる死に、私も、まだ、信じられずにいます。我々の、仲間だった彼を思って全員で黙想しましょう。
高尾くんの御冥福を祈って、全員黙想」
馬鹿みたいに陳腐で定型的な校長の言葉に胸を打たれるところはない。ただ、私は、目をつぶっていただけだった。



私と高尾は、別段深い関わりがあったわけではない。と言うよりも、ほとんど関わりを持ったことがない。
同じクラスに、なったことは一度もないし、彼は目立たないやつだった。
どちらかといえば、地味で大人しくて、いつも一人。かと言って、いじめられっ子なわけでもないし、話しかけられたら普通に話す。
そんな、何とも不思議なやつだった。
私と彼の唯一の接点は、毎朝廊下ですれ違うことくらいなもの。実際、彼が死んだという話を聞くまで、彼の名前すら知らないくらいだった。