主に私の気持ちの面で、全然違う。

 最初にこの家に来た時は、まだ廉冶さんのことを何も知らなかった。
 彼の言葉も信じられなかった。

 けれどいつの間にか、私は恋に落ちていた。

 廉冶さんはいつも優しかったし、穏やかだったし、私にたくさんの愛をくれた。

 マオ君をかわいがっているところも、仕事に一生懸命なところも、少し面倒くさがりでだらだらしているところも、全部好きだ。

 こんなの、好きにならないわけがない。

 廉冶さんはわざと意地悪を言っているだけで、私の気持ちもお見通しなのだろう。

「でも、ちょっと悔しいな」

「何がだ?」

「廉冶さん、『どうせ俺のことを好きになる』って言ったでしょう? 結局その通りになってしまったから」

 そう言うと、彼は頬を赤くして、私から顔を背けた。

「だから、あんまりかわいいことを言うなって。我慢できなくなるから」

 廉冶さんは私にもう一度キスをして、優しい声で言った。 

「俺はきっとこれからも、もっと弥生のことを好きになるよ。だから弥生も、もっと俺のことを好きになればいい」

 私は彼のことを抱きしめ、そうだねと呟いた。

 目を閉じると、遠くで波音が聞こえた気がした。



 この島には、神様が住んでいる。

 美しい海に囲まれ、猫がそこら中でくつろぎ、優しい人々が穏やかに暮らしている。

 私はこの島で、これからも廉冶さんとマオ君と、一緒に生きて行きたい。
 
「廉冶さん、私を迎えに来てくれてありがとう」

                      
                                     【完】