その日は結局家に帰ってシャワーを浴びて、マオ君はすぐに眠ってしまった。

 私はマオ君が眠ってから、廉冶さんの仕事部屋で、沖田さんに言われたことを伝える。

「シロさんね、もう長く生きられないんじゃないかって……」

 廉冶さんは畳の上に座りながら、「そうか」と呟いた。
 廉冶さんも、薄々気が付いていたのだろう。

「私、どうしていいのか分からなくて……」

 そう言うと、廉冶さんは私の手を取って言った。

「マオの気がすむようにさせてやろうか。
俺たちがもうシロに会いに行くのはやめろと言っても、きっとマオは納得しないよ。シロの死期が近いなら、なおさらだ」

「そうだよね。だけど……マオ君が、辛い思いをするのは……」

 それを聞いた廉冶さんは、優しく目を細めた。

「大丈夫だ。あいつは強い子だから。むしろ、俺は弥生の方が心配だよ」

「私はもう大人だから」

「大人だからって、別れが悲しくないわけじゃないだろう」

 そう言ってから、廉冶さんは私をぎゅっと抱きしめた。

「無理するなよ」

「……うん」

 彼の腕に包まれて、私は静かに目を閉じた。