男の子はぽかんとした顔で私を見つめる。
これが私のもう一つの力だった。
私には、他人のケガを治せる力があった。
ケガを治すのには自分の体力を削る必要があるのか、友達が車に轢かれて大きなケガをした時、治そうとしてそのまま倒れてしまったことがある。
しかもケガを治したことでその友達には「気持ち悪い」と言われて絶交されてしまったという嫌な思い出つきだ。
また気持ち悪いと思われたかな。やっぱりやめた方がよかったかな。
そう考えていると、男の子はキラキラした目で私を見つめた。
「治癒の力が使えるんだ。お前、すごいな!」
「え? うん……」
ごく自然に受け入れられ、拍子抜けしてしまった。
それまで力があることで避けられたり嫌われたりしてばかりでまともに友達もいなかった私は、彼に喜んでもらえてとても嬉しかったのを覚えている。
男の子はにっこり笑って、私の手を優しく握った。
「ありがと。名前は?」
「私は、弥生(やよい)」
「弥生か。俺は廉冶(れんじ)。これは、人間の世界で生活する時の名前だけどな。弥生、一緒に遊ぼう!」
「うんっ!」
その頃歳の近い友達がいなかった私は、それから夏休みの間、毎日のように廉冶と遊んだ。
毎日空が暗くなる時間まで、二人で色々なところに行って遊んだ。
彼と一緒に過ごす時間は楽しく、「大きくなったら結婚しよう」という約束までした。
そして夏休みが終わり、私がお祖父ちゃんの家から発つ日も、彼は見送りに来てくれた。
「約束だから。絶対に絶対に、弥生を迎えに行くから」
私はそう言ってくれた彼を抱きしめ、「ずっと待ってる」と答えたのだ。
なんて可愛い思い出だろう。
まぁ、結局迎えに来なかったんですけどね。