「昼ご飯できましたよー」

 私は作ったご飯を机の上に並べ、廉冶さんとマオ君を呼ぶ。

「おお、うまそうな匂いがする」

 廉冶さんに続いて、マオ君も無言で席につく。

「いただきます」

 三人で手を合わせる。
 献立はほうれん草と豆腐の味噌汁、アジの干物、きゅうりの漬け物にだし巻き卵だ。

 材料はほとんど島の人たちにもらったもので出来ている。

 だが、私には懸念があった。

 私は特別料理がうまいわけではない。
 一人暮らしをし始めた大学一年の頃は、張り切って凝った料理を作ったりもした。

 だけど、サイトに書かれたレシピ通りに作ると、どうしたって材料が余ってしまう。

 失敗した大量の料理を一人で食べ続けるのは味気ないものだった。
 そのうち私はお弁当や総菜を買うか、簡単な物しか作らなくなった。

 なので、自分の作る料理にはまったく自信がない。
 今日の献立は、料理のサイトを見ながら試行錯誤してみた。

「人に料理を作ったこと、あんまりないから。おいしいといいんだけど」

 ドキドキしながら、廉冶さんの反応を見ると。

「うん、おいしいよ」

 ……あれ?
 廉冶さんは口ではそう言ってくれるけれど、何だか無表情だ。というか、顔が強ばっているような気がする。

 おいしいと言いながら、すべて完食してくれたけれど、本当にそう思ってくれたのだろうか。

「マオ君はどうかな?」

 食器を片付けながらマオ君にそう声をかけると、マオ君は何か言おうと口を開いて、すぐにいなくなってしまう。


 私はお皿を洗いながら、一人で唸ってしまった。

 廉冶さんの反応、微妙じゃなかった?
 ああいうもの?
 それとも嫌いなものでもあったのかな。

 マオ君も、やっぱり壁がある感じだし……。
 単純においしくなかったのだろうか。

 そう考え出すと、どんどん落ち込んでしまうし、欠点ばかり考えてしまう。

 確かにお魚は、焼きすぎて少し焦げてしまったし。味噌汁も火を消すのが遅くて、煮立ってしまった。きゅうりも分厚かったし、だし巻き卵は味付けが濃かったかもしれない。

「私、全然ダメかも……」

 考えれば考えるほど、全然ダメな気がしてきた。

 落ち込みそうになって、自分を奮い立たせる。
 今がダメでも、次にもっとおいしいものを作ればいいのよね。