その答えは、家への帰り道で、すぐに分かった。

 私たちがスーパーから出て家に帰ろうとしていると。
背後から突然厳しい声がして、おばあさんに呼び止められる。

「なぁ、あんた!」

 おばあさんは、どうやら私を呼んでいるようだ。

「は、はい!? 私ですか!?」

 私、何かいけないことをしただろうか。
ビクビクしていると、おばあさんはずいとこちらに顔を寄せ、私をジロジロと睨みつける。

 なんだろう、新住民への洗礼とか!? 私、何かこの島の掟を破りましたか!?
 廉冶さんがおばあさんに声をかける。

「おはよう、菊さん。腰痛は治ったか?」
「まぁまぁだね。最近針をやってもらってるから、だいぶ楽だけど」

 それからおばあさんは私に向き直り、怖い声で言った。

「あんた、成瀬先生のところの嫁かい?」
「え、えぇと、そんな感じです」
「さよか、じゃあ、これ持って行きぃ」

 そう言って、おばあさんは背負っていたかごを下ろし、中に入っていたトマトを私に手渡す。真っ赤で大きくて、とてもおいしそうだ。

「これな、うちで育ったトマトやから。形は不揃いだけど、おいしいから持って行き」
「えっ!? でもそんな、悪いです」

 私が断ろうとしていると、後ろから別のおばあさんがやって来た。

「おや、見ない顔だねぇ」

 菊さんと呼ばれたおばあさんが、その人に説明する。

「この子、成瀬先生のところの嫁だって」
「おや、あんたがそうなの。じゃあ、これも持って行きな。うちの畑で育ったスイカや」

 そう言って、そのおばあさんは私にスイカをくれた。
「えっ、えっ、でも……」

 そうこうしているうちに、後ろからおじいさんがきて、今度はアジの干物をくれた。

「この子が成瀬先生のところの?」
「おお、成瀬先生のところの子か。刺身あるぞ、捌きたてだ! 刺身食べるか、刺身!」
「ちょっとあんた、こっちに来てみな! この子だよ、この子!」

「え、えっとぉ……」

 ぼんやりしているうちに、どんどん人が増えていく。

 そんなわけで、すれ違う人たち、特におじいさんやおばあさんが、大量の魚や野菜や果物をくれたので、あっという間に抱えきれないほどの大荷物になってしまった。
 いや、ありがたいけれども。

 廉冶さんは笑顔で彼らに手を振った。

「みんな、ありがとうなー」

 島の人たちは、満足そうな様子で私たちを見送る。
 私は何が起こったのか理解できないまま、もらった食べ物を抱えて歩く。

 三人で分担したけれど、それでもみんな両手一杯になるくらい集まった。

「嵐のようだった……」

 なるほど、食材を買う必要がないって、こういうことだったのか。

 廉冶さんの言っていた通り、この島は老人の人口比率が多いみたいだ。
 だからだろうか、島全体の雰囲気ものんびりしている。

 大量の野菜や魚を抱えて坂道をふらふら歩いていると、足元でにゃあと鳴き声が聞こえた。

「あ、猫」