街路樹のバス停でまつ二人の姿を凝視する一人の女性の姿があった。

セミロングの黒髪に西高のブレザー制服を着た少女。

桜井南だった。

桜井南は金糸の髪色を見て、あの日の真白と名乗った少年だとすぐに理解した。

桜井南は繫華街の方から向かってきたため、真白たちが丘の方からやってきたことが容易に想像できた。

それに真白の隣りにいる黒いドレスの少女を見ると一目瞭然だった。

桜井南はゆっくりと歩みを進める。

こんな地味な私を覚えていてはくれないだろう。

あんなにも綺麗な顔をしている。

隣りにいる少女もなんと綺麗な顔をしているのだろう。

桜井南が真白たちの横を通り過ぎようとすると、真白が声をかけた。

「こんにちは、桜井南さん」

ただの挨拶、それなのに桜井南の心は踊った。

私の名前を彼が呼んでくれた。

私を覚えていてくれた。

すごく嬉しい。

桜井南は挨拶を返そうとするも緊張で声が出なかった。

桜井南は頬を赤く染め上げながら、会釈を返して通り過ぎていった。

その様子を見ていたセシリーは、

「あなたのそういう無自覚なところが罪なのですよ」

真白は何が罪なのか腑に落ちないでいて、

「・・・・・・・はあ」

と答えた。

朴念仁と言うのは真白のような人を指すのでしょうねっと、セシリーは思うのだった。