「まぁ、それにしても真面目すぎないか?」
「お前は不真面目なんだよ。慶太」
陽一は、眉間にしわを寄せて慶太を睨み付ける。
睨み付けられても、毎度のことに慣れている少年--【山沢 慶太(ヤマザワ ケイタ)】は陽一の唯一の友達。
剣道部では、一軍に入る程の実力を持っておりポジションは副将をしている。だからこそ、陽一は誰よりも厳しく言葉を返す。なぜなら--。
「だってさ、たまには息抜きが必要だろ?」
「お前は、息抜きしすぎなんだよ」
反省の色も見せない慶太に、陽一の眉間のシワは深まるばかり。
慶太は実力はあるが、お調子者で面倒くさがりや。隙あらばサボろうとする慶太は、部長の陽一にとっては、たまにキズ。
いい加減真面目に取り組んでくれないかと、頭を悩ます日々。一方、部長の頭を悩ます当の本人は、呑気に口を開く。
「うるさいな~。そんな堅いことばっか言ってると、ジジィになるぞ。あっ。もうジジィになってるか」
慶太は、片手で口を押さえて、クククッと笑いながら陽一をバカにする。バカにされた事に、短気の陽一は耐えることが出来ず、ある行動を起こす。
「い゛でぇーーー!」
慶太の発言に腹を立てた陽一は、竹刀の先端で慶太の頭に摩擦を起こす。頭のてっぺんの一カ所に、ひたすら摩擦を起こし続ける。
頭皮が熱くなるたび、痛みが酷くなる。それに耐えきれずに、慶太は大声を張り上げた。
「痛てーな!ハゲたらどーすんだよ?!」
「なら、ハゲジジィになれ」
陽一は、「ハゲろ、ハゲろ」と呪いをかけながらやり続ける。
「~~悪かった!悪かったから、やめてくれ!」
陽一の血も涙もない鬼の発言と攻撃に、慶太は涙声になりながら降参した。