でも──。
団子を丸める手がまた止まる。

彼と付き合ったらどんな感じなのだろうと、つい考えてしまうのだ。あんなに嫌っていたはずなのに、怪我をした時に垣間見せた優しさを何度も思い返してしまう自分が心もとない。

もし私が試験に落ちたら、私はあの北条怜二と付き合うことになるわけで。試験に落ちるのは簡単なわけで……。

だからこそ彼の真意がわからないのだ。
彼はどんな美人でも色目を使ってくる女は片っ端から拒絶している。すごく理想が高いはずだ。

だったらどうして彼は私にあんな条件を出したの?
私が本気で食いついたらどうする気だろう?

……という堂々巡りをしながら毎晩仇のように団子を丸めているおかげで、私の鶏団子は短期間で格段にレベルアップしている。彼はこの効果を狙ったのかなと思うと、操られているようで面白くないのだけど。

作業中、スマホにメッセージの着信があったので団子練習を終えてから覗いてみると〝その後どうなった?〟という美保子からの様子伺いだった。

〝代役見つかったよ〟

〝レンタル彼氏?〟

〝違うよ〟

 するとすぐに通話に切り替えられた。