ーーーーーーその日の放課後。

「あれ、結衣。傘、忘れたの?」

親友の麻耶が、声をかけたきた。

「うん」

私は、教室の窓から空を見上げた。今も強い雨が降り続いており,止む気配はない。

「これ、よかったら使って」

「えっ!」

私が困ってると、耕太が横から青色の傘を渡してきた。

「え、そんないいの?」

「教科書、僕に見せてくれたお礼」

私が断る前に、彼は傘を渡してその場から去った。

「結衣、好きなんでしょ」

「‥‥‥」

となりから麻耶の声が聞こえたが、私は顔を赤くしたままだった。


「酒井さん、起きなさい」

「は、はい」

頭上から怒鳴り声が突然聞こえて、私は飛び上がった。目の前には、険しい表情をした担任の若い女性教諭がいた。

「‥‥‥」

どうやら、思い出にふけているうちに眠ってしまったようだ。夏の日差しが教室の窓から降り注いでいるのと同時に、私の片思いも長引いてると思った。