『"日本の民法、734条~736条において、近親者との婚姻について記載されている。"』

レンは 蒸発しないよう、鍋の水を足す。ダルマストーブの火を見ながら。

『"民法734条、直系 血族 父母、祖父母、総祖父母、高祖父母子、孫、曾孫、玄孫。
兄弟姉妹、叔父叔母・甥・姪との結婚は不可能。"』

暗い 空を見つめる。
繰り返した 血を引いてる、
知っている。

『"傍系血族、同祖先から分かれ出た、兄弟姉妹、叔父、叔母、甥、姪、従兄弟姉妹、再従兄弟姉妹。
傍系血族は、三親等内の結婚が禁止。" 』

子どもの頃から、皮膚が敏感だ。
アルビノとまでいかないが、皮膚、髪、目に 紫外線を防ぐメラニン色素が少ない。

『"よって 四親等以降の傍系血族は、結婚可能。"』

世界で、同性婚姻。未成年の婚姻。意外に、認知される国は多い。比べ従兄妹の婚姻は、稀な数だ。

『"従兄弟姉妹は4親等、結婚できる。"』

理由は、倫理と劣勢因子の確率が学術的に高くなる 認識がある事。


俺の方が 継いでる
「禁忌のパンドラか。」
ダルマストーブに乗せた鍋がまた、沸騰してきた。

酷く 愛おしく
所業を言える単語が、
体現する言葉が 見つからない。

誰よりも、深く深く。
酷いんじゃないか。
親愛が 血脈みたいに広くて、
重ねた分だけ、深い、んだよ

「シオン。」

顔を目掛けて連投する。

重なって また寝れたら 思うが、
恐らく、叶わない事。

「殺される?」
猫の様に 頭をシオンに擦り寄せた。

ダルマストーブの火を見ながら
そして 遠い 時間を見ながら。


「時代が時代なら、この娘は、貴方のモノよ」母親の声。


『"第一次性徴
胎児時、男子なら陰嚢や陰茎、女子なら子宮や卵巣が形成される。"』

腕の赤子を見せてもらった のは、幼稚園から帰って連れられ 家だった。

『"乳児期早期は、思春期並に視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモンが多く、下垂体より性腺刺激ホルモンが分泌される。"』

目の前にまで 抱き見せてくれた赤子。
顔を寄せてみると、練乳みたいな匂いと、慕情する乳房みたいな心地が 幼い脳に 焼き付いた。

口弓なりの笑顔。誰だった?

『"男性では将来の精子形成に重要だとされており、女性でも小卵胞が出現する。第一次性徴" 』

「子どもん時から、同なじに居たり、見たりすりゃ、似た考え方 するもんだろ。」ルイの声。

『"第二次性徴
男子は約11~14歳より、女子は約9~12歳より 生物学的な性差が再度起こる。"』

違うな。
夏、会える期間触れた。
会えない期間は、会える時の為。
夏会う度 密かに舐める
『肌ざわり』から浸透しろよと。

男になって
異性に成長する
同じ環境、同じ思い出、
俺視線は?ズブズブだ。

大人になり切らない揺らめく
価値の中で、
意識するのを 繰り返したら

『同族』に『恋愛』
「恋に落ちるんじゃないかって」
初めから 堕ちる、
予定調和だったか?
違うな。

反対の耳朶から、声が響いた。
一瞬、吐息が耳に微風だ。
意図的に作り出されたものか、否
偶然による、もんか。
意図的禁忌。

「『戒め』でもあったんじゃないか。
ほんと、会いに来てなくて、良かったよ。もし、来てたら 俺。」

夏の度触れた 半分の血を埋める。
欲しがったモノ、
大人で食べたら、
他が食べられなくなる。

「シオン。」

『"生殖能力を持ち、子供から大人へ、心身が成長する時期である。第二次性徴"』

己れが 逢わない季節を
越える毎に、

連打剛球の如く、打ち付ける。
容赦なくぶち続けて、
暴くのは、欲


周りに散乱している、
開いた肉に、
欲を 少しかき集め『段ボール』に 入れる

成長して、180度対極に、
艶やかになる 身体に
魅せられ、
離れた血を集めたくて。

表情は作らない。
禁句だ。
口、開けすぎで、頭沸いてる

必ずやって来る
季節を重ねる 毎に、
散らばる 欲を
手で集めている。

食する、そこを 一瞬にして
『業火』に焼べたら、
上書きされて、
新しく深くなる、欲、暴走。

独り言のように、
鼓動を聞き始める。
周りに散らばる 欲をまた集める。

ふと、浮かび上がった、
煌めく『斑の心』
代わりに答えた 氷のような声

「シオン、今、何、考えてる?」

集めた欲を ザッーーと、砂時計のように、注いだ。撒き散らした欲は、全て 隣にある 『段ボール』へ 注いだ。

「シオン」

食べたら、他が食べられなくなる
吐露した瞬間、
目が 星に光って 宿って
大きくなった。

「シオン、今、何、考えてる?」

シオンの こめかみ を、、
酷く 愛おしく 止まった。

己の胸肉に ズブズブと
閉じ込める欲を
作った両拳で、握りしめ。
俺は 最上級に 微笑みかける。

斜に見ると、
口を弓なりにして笑顔になる。
あれは、誰だ?

思いは別にしても、
敢えて壊したい、それで分かる。
半分の血を埋める欲、

「本当に、パンドラだ。」

シオンの頭をいつもの様に 撫でる。

「シオンに 要求とか、何か迫ったり 、してない。」

シオンの頭を撫でていた手を、

「俺達の感情は、ちゃんと、自分の感情だ。つくられたモノじゃないよ。」

シオンの頬に サラリと 移動させた。

「時代を動かすような 人達が 作った、血を継承する、仕掛け、されてたとしても、」

シオンの頬に 添えていた レンの手が、シオンの 首筋まで ゆっくり這って 新しく深くなる、

「俺達の 感情は、俺達のもだ。」

動脈のあたりで
ユルリっと 撫でられる。
酷く 愛おしく 止まった。

「殺される。」感情。
他が食べられなくなる

首肌を抑えられると、鼓動を感じる。きっと この先、孤独死だ。

指から、食べたくなる
シオンと同じ
酷く 愛おしく
薫りがく揺る
肉が開く。

パンドラの底に残ったモンて
何だと、思う

「シオンが入る、墓。俺も 最後、入っていいか」

号泣する声
「殺される。」感情。
両目から 涙を 溢れさせて、
決壊したように、声を挙げて

果てを 目の当たりにする 哀しさ。
残された「欲を知る」

豪雨に撃たれるような、
嘆きを挙げる
どんな 哀しみが降っている?

一瞬にして 『業火』に焼き
大人の男が 激しく泣く姿

今、俺は、 此処にいない。