私が名前を呼ぶと振り返り「碧……っ」と呼んだ。
だけど、そんな彼は少しばかり疲れた様子だった。
「碧……会いたかった」
「ちょっと来て!!」
「えっ……碧っ?」
彼の言葉を遮るかのように手を引っ張り安全な桃の木の近くに急いで行く。ここは、妖が妖力を回復するための木で失ったままいると最悪死んでしまう……それくらい強い結界なんだ。
「柊っ!! なんで、来たのっ……家は危ないこと知ってるでしょ!?」
「うん、知ってる」
「じゃあ、なんで……っ結界に触れたら、死んじゃうかもしれないんだよっ」
「ここで妖生が終わったとしても、碧に会いたかったんだ」
どうして……? なんで命かけても私に会いに来たの……っ?
「俺は、鬼だよ。将来、鬼神になるかもしれない……そのために捨てなきゃいけないことはたくさんある。だけど、どうしても犠牲にしたくないんだ……碧は、碧だけは」
「え……?」
それは、期待をしてもいいのかな……少しだけ、顔が緩んでしまいそうになる。