あたしは唖然としてアユカの説明を聞いていた。


今朝学校でアユカを見たとき、頬が腫れているように見えたのは勘違いじゃなかったのだ。


あたしはゴクリと唾を飲み込んでアユカの手を握り締めた。


「その男って誰? 誰だかわかってるんでしょう?」


今の話を聞いた限り、アユカは写真という弱みを握られていてもかなり強気に出ている。


それは相手が知っている人だからではないかと、考えていたのだ。


「ううん。知らない人だよ」


それなのにアユカは左右に首を振って見せた。


「嘘ばっかり! 全然知らない人相手にそこまで強気になれるワケないでしょう!?」


盗撮魔なんて何を考えているのかわからない。


トイレの裏に引きずり込むようなことまでされたら、怖くて抵抗できなくなっても不思議じゃなかった。


「本当に、知らない相手なの」


アユカはそう言うと、あたしの手を振りほどいた。


「ちょっと、アユカ?」


「あたし、もう行かないといけないから」


アユカは早口にそう言うと、逃げるようにかけだしたのだった。