盗撮男はジッとあたしのことを見つめている。


『助けて』と叫びたかったけれど、盗撮男の冷たい視線にがんじがらめにされてしまった。


あたしの言葉は喉の奥に張り付いて出て来なくなり、嫌だという気持ちがあるのに、足は中年男性と共に歩きだしていた。


どうやって逃げ出そうかと考えていたが、盗撮男はあたしたちの数歩後ろをついてきた。


あたしの行動を関しているのは明白だった。


途中で逃げ出したらどうなるのか。


本当にあの写真をバラまかれてしまうんだろうか?


そう考えると、声を出す勇気もでなくなった。


後方から無言の圧力を感じる。


「ここでいい?」


気がつけば、あたしは中年男性と共にホテル街を歩いていた。


ハッと気がついて立ち止まり、「い、嫌です」と、左右に首をふる。


「は? ここまで来て何言ってるの?」


さっきまで鼻の下を伸ばしてヘラヘラしていた中年男性の声色が、急に険しくなった。