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男が言っていることがすべて本気だとわかったのは、約束場所の駅前に見知らぬ中年男性が現れたからだった。


「やぁ、気味がジュンナちゃん?」


そう言って声をかけてきたのは50代くらいの中年太りをした男性だった。


髪の毛も薄くなり始めていて、手にはとても目立つ黄色いカバンを持っている。


この黄色いカバンが援助交際の相手との目印だったのだ。


あたしは一瞬マジマジと相手の男を見つめてしまった。


まさか本当に来るなんて思っていなかった。


盗撮男が勝手に決めた『ジュンナ』という名前を呼ばれても、全然ピンとこなかった。


「ずっとここにいたら怪しまれるよ。一緒に行こう」


そう言われて手を握られた瞬間、これは現実なのだと理解した。


キツク握られた手は脂肪と汗でブヨブヨ、ベタベタしていて気持ちが悪い。


咄嗟に振り払おうとしたとき、柱の陰に立っている盗撮男と視線がぶつかった。