男はあたしの顔を見つめて「どうして俺を追いかけてくるんだ?」と、冷たい声で聞いてきた。


その声には抑揚がなく、感情を読み取ることができなかった。


「お、追いかけてなんか……」


そう言いながら振り返る。


大通りへ戻るには細い道を右へ左へと入っていかなければならない。


この現状にあたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


男は冷たい表情を浮かべてジリジリとあたしに近づいてくる。


男が一歩近づくにつれて、あたしは一歩一歩後退していく。


このまま一気に走って逃げきることができるだろうか?


今はもう、魂取りのことより逃げ道を探すことで頭がいっぱいになってしまっていた。


「君、結構カワイイね?」


男がニタリと笑みを浮かべる。


それはさっきの少女へ向けていた笑顔と同じものだった。


全身に鳥肌が立った次の瞬間、男が大きな一歩を踏み出してあたしの手首を握り締めていたのだ。