両親でも、叔父さんでも誰でもいい。


そう思うのに、男を追いかけることに必死になってしまった。


男はまるであたしに尾行されていることに感づいているかのように、右へ左へと道を曲がり、早足になっていく。


「どこまで行くつもりなの……」


必死に追いかけるあたしは息切れをしてきていた。


その時だった。


男が不意に立ち止まり、振り向いたのだ。


あたしもほぼ同時に立ち止まっていたが、男と視線がぶつかって背中に冷や汗が流れて行った。


いつの間にか周囲の喧噪はかき消えて、細い路地に男と2人きりになっていたのだ。