男は人波に紛れそうになりながらどんどん歩いて行く。


それは今から出勤するというよりも、あてどなく歩いているような雰囲気だった。


そんな中男は時折立ち止まり、ジッと行きかう学生たちを見つめることがあった。


それは決まって女子たちが集団で登校している風景だ。


あたしは徐々に嫌な予感を覚えてきていた。


さっき少女は電車で痴漢に遭ったと言っていたけれど、まさかこの男じゃなだろうかという予感があった。


その場合、あたし1人で男と対峙するのは危険な行為だ。


やっぱり、誰かに連絡しないと。