その様子を見てギュッと胸が痛くなった時、強い視線を感じて振り向いた。


人波の中、立ちつくしているサラリーマンの男がいた。


男は泣きながら学校へ向かう少女の姿をジッと見つめている。


「あの男……!」


間違いなく、さっきあたしの横を通り過ぎて行ったその人なのだ。


男はジッと少女を見つめ……次の瞬間、ニタリとねばついた笑みを浮かべて舌なめずりをしたのだ。


その様子にゾクリと背筋が寒くなった。


普通じゃないと瞬時に察知してゴクリと生唾を飲み込む。


お父さんに連絡した方がいいかもしれない。


そう思ってスマホを入れているスカートのポケットに手を入れたのだが、男性が踵を返して歩きだしたのだ。


「あっ!」


今動かれたら見失ってしまう!


一瞬迷ったが、あたしはスマホをポケットにしまい込み、男の後を追いかけたのだった。