といっても、やっぱりさっきの真っ黒なサラリーマンのことが脳裏から離れなかった。


あのまま放置しておけば、あの人はまたなにか悪事を働く。


最悪の場合、誰かの命に関わってくるかもしれないのだ。


そう思うと、もういてもたってもいられなかった。


あたしは前触れもなく立ち止まるとアユカへ向けて「ごめん! 忘れものしたから取りに行って来る!」と言い、走りだしたのだった。