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向かう先は美術室だった。


平山先生が残っているかどうかわからなかったけれど、足を止めずに真っすぐ部活棟へ向かう。


美術室の前まで来ると、電気が消えているのがわかった。


やっぱり、もう帰ってしまっているだろうか。


ドアに手をかけてもしっかりと施錠がされていた。


「先生、いませんか?」


念のために声をかけてみると、中からドアの開閉音が聞こえてきた。


今のは美術準備室から誰かが出てくる音だ。


あたしは気を引き締めて前方を睨んだ。


「誰だ?」


そう言いながら鍵を開き、平山先生が姿を現した。


その姿は前回見たときよりもさらに黒く塗りつぶされている。


あたしは一歩後退し、先生の胸に集中した。


どす黒い汚れは渦を巻き、黒いモヤを周囲にまき散らしている。


「君はこの前美術室に来ていた子だね」


途端にさわやかで優しい声に変化した。